フランスの定番アイテム

エスパドリーユ

フランスの伝統的なエスパドリーユ作りは、ピレネー山脈にほど近いベアルン地方やバスク地方で18世紀から発展しました。亜麻で靴底を編む職人と、それを覆うリネン生地を縫製する職人によって、その伝統的な製法が受け継がれています。スリッパのように履いたり、足首で紐を結んで固定して履いたりできるエスパドリーユは、軽量で耐久性に優れているため、労働者や軍隊の間で広く履かれるようになりました。南仏では、エスパドリーユで踊ったり、仕事をしたり、山登りやラグビーもしたりするんです!

50年代に入って、バカンスや余暇のくつろぎの時間に履くカジュアルな履物としてエスパドリーユを選ぶフランス人がどんどん増えてきました。60年代になると、クチュール界の大御所イヴ・サンローランが「エスパドリーユ・コンパンセ」という厚底のデザインを発表したことから、エスパドリーユはモード界の仲間入りを果たしました。以来、フランスの有名なシューズブランドたちがこぞって、オリジナルのエスパドリーユを作るようになりました。

フラットなタイプも厚底のタイプも、性別に関係なく、伝統的なエスパドリーユはフランス人にとって普段のワードローブに欠かせないアイテムのひとつになりました。

ルームシューズ

フランス伝統のルームシューズ「シャランテーズ」は、フランス人にとって家でのくつろぎのひとときを象徴するアイテムです。その誕生は17世紀にさかのぼり、フランス西部に流れるシャラント川のほとりに多く建っていた製紙工場から出るフェルトのくずを用いて作られていました。当初は、堅い木靴と比べて柔らかく、足音が立たないことから「Silencieuses(静かな靴)」と呼ばれていました。

秋風が吹きはじめたら、フランス人はふかふかのシャロンテーズに足をすべりこませ、寒い季節でも温かな足元で過ごすのです。

ベレー帽

伝統的なベレー帽は素材がフェルト生地で、フチにはレザーのパイピングがほどこされています。19世紀にピレネー地方の男性たちの間で広く親しまれ、30年代になるとファッションに欠かせない小物として女性たちもかぶるようになりました。

ベレー帽は、元々羊飼いたちが雨や寒さをしのぐために用いていたもので、手編みした羊毛をピレネー山脈の湧き水に浸してフェルト生地を作り、白色や生成色のままだったり、茶色や紺色、赤色に染めたりして、地域ごとに色分けがなされていました。ベレー帽の裏側に縫い付けられたラベルには、ベレー作りが盛んなオロロン・サント・マリーの町で働く手編み職人たちで結成されるグループの、それぞれの紋章が印されています。羊飼いたちの帽子だったベレー帽は、徐々に軍隊の帽子として世界的に広まり、隊によってさまざまな色やエンブレム、かぶり方が決められています。

ミシェル・モルガンやブリジット・バルドーといったフレンチ・シックを体現する女優たちも愛用し、いつの時代も、ベレー帽はフランスのファッションを象徴するアイコン的な存在でありつづけます。

カンカン帽

フランス語で「カノティエ」と呼ばれるカンカン帽は19世紀初頭のパリで生まれました。ちょうどその頃、セーヌ川を帆付きカヌーで遊覧することが許可され、パリジャンの楽しみのひとつとなりました。

上部が平らな麦わら帽子は、カヌー遊びを楽しむ人たちのお気に入りのアイテムとなり、瞬く間に流行したことから、カヌーを漕ぐ人を意味する「Canotier カノティエ」という名前が付けられました。その後、ギャンゲットと呼ばれる河畔の屋外ダンスホールやキャバレーなどでもかぶられるようになり、オーギュスト・ルノワールの「舟遊びをする人々の昼食」に代表される、当時の印象派の画家たちが描いた絵画の中で、カンカン帽をかぶる人たちの姿を見ることができます。前に傾けて、何気なく耳の上に置くようにかぶるのが、その頃のおしゃれなスタイルでした。

19世紀後半になると、狩猟や乗馬、サイクリングといったスポーツを楽しむ女性たちもこの帽子をかぶるようになりました。ココ・シャネルは、自身のシンプルで自由なスタイルを象徴するアイテムとして、カンカン帽を好んでかぶっていました。

今でも、パリのファッションショーでカンカン帽が頻繁に登場し、その良さを再認識できます。あえて素朴でさりげないおしゃれを好むパリジャン、パリジェンヌたちが、春からカンカン帽を愛用するのがここ数シーズンの傾向です。

ボーダーカットソー

日本ではバスクシャツやボーダーカットソーいった名前で親しまれる「マリニエール」は、フランス人のワードローブに欠かせない定番アイテムです。元々は18世紀からフランス海軍の制服として用いられ、海に落ちたときに見つけやすいようにと服に縞模様をほどこしたのが起源とされています。1858年には、フランス海軍のマリニエールの縞の数はインディゴブルーが20〜21本、それよりも2倍幅広の白い縞が21本と定められました。

多くのフランスの定番アイテムと同じく、このボーダーシャツを初めて一般人向けにデザインしたのがココ・シャネルです。海沿いの保養地によく通っていたシャネルは、地元の海兵が着ていたマリニエールにインスピレーションを受け、ドーヴィルのお店で丈の短いボーダーシャツをマリンスタイルとして発表しました。以来、縞模様はリュクスなモチーフとなりフランス各地で流行しました。それからしばらくして、イヴ・サンローランやジャン=ポール・ゴルチエといった人気デザイナーが、さまざまなかたちやスタイルでボーダーシャツを何十年にもわたり提案し続けています。

マリニエールは、シャルロット・ゲンズブール主演の「なまいきシャルロット」やジーン・セバーグとジャン=ポール・ベルモンドが共演した「勝手にしやがれ」など、有名なフランス映画にもしばしば登場しています。また、ブリジット・バルドーやイネス・ド・ラ・フレサンジュといったフレンチ・ファッションのアイコン的存在はもちろん、ジェームス・ディーンやジャクリーン・ケネディなど、男性も女性も、フランス生まれのボーダーシャツを着こなしています。

傘・日傘

開いた傘は遠くからでも目につく存在だけに、持つ人の姿に洗練された印象を与え、細部にわたるおしゃれへのこだわりを際立たせてくれるアイテムです。傘は利便性だけでなく、女性なら他の人とは違う魅力を、男性なら風格を格段にアップしてくれる大切なファッション小物と言えるでしょう。

フランスで雨傘や日傘が使われはじめたのは18世紀から。太陽王と呼ばれたルイ14世もヴェルサイユで愛用していました。当時は、雨や日差しをしのぐという実用性よりも、東洋から渡ってきたエキゾチックな品物として愛でられていたといえるでしょう。

実際に傘が一般的に使われるようになるまでには、フランスとヨーロッパで実に300以上にも及ぶ特許申請が行われ、改良が重ねられました。世界初の折りたたみ傘は1710年にパリで誕生しました。18世紀のフランスでは貴族の間で広まり、フランス革命の頃にはオシャレな小物として用いられるようになりました。1769年には橋を渡る人たちを日差しから守るために、パリで初めての傘を貸すサービスが登場しました。
当時は、華麗でエレガントなイメージを与える高級品を家内工業で作る時代でした。雨傘や日傘、その他の傘はすべて「Parapluitierパラプリュイティエ」と呼ばれる傘職人たちが手作りしていました。ファッション界ではランヴァンやエルザ・スキャパレッリの傘が有名です。

傘が登場する映画といえば、1964年のカンヌ映画祭でパルムドールを獲得した「シェルブールの雨傘」があります。若かりしカトリーヌ・ドヌーヴがヒロインを演じていました。ジョルジュ・ブラッサンスが、雨の中出会う恋人たちを歌った「Le parapluie」という曲は、フランス人なら誰もが「un petit coin de parapluie contre un coin de paradis(傘の下は天国のよう)」というサビを口ずさめる名曲です。

バッグ・レザー小物

フランスのマロキヌリは、その高い技術で世界的な評価を得ていることで知られています。革の染色やレザー小物、手袋、馬具などのさまざまな種類の革製品を作る、唯一無二の伝統とノウハウが、フランス各地に何世紀にもわたり受け継がれています。

フランスの製革業は原料の生産から盛んです。ローヌ・アルプ、アルザス・ロレーヌ、アキテーヌ、ミディ・ピレネーの4つの地方で原料の皮が生産され、子牛や雌牛、雄牛の大きな皮から、山羊や子羊の小さな皮まで、専門の職人たちがなめし作業を行っています。素材を熟知するこれらの職人たちは、その後、高級ブランドやよりニッチな市場向けに革を売る卸業者となりました。

レザー業界全体として、環境負荷低減に向けて常に改善を続けています。上質な素材と優れた耐久性、細部にわたる確かな仕上げ、そして時代に左右されず、かといって決して古くならないスタイル、そのすべてにおいて絶妙なバランスを保つものこそが、フランス流エレガンスを体現するマロキヌリと言えます。

コスメ

フランスの浴室に欠かせないマルセイユ石鹸は、キューブの形と独特な緑色が特徴で、ひと目見ただけで、南仏プロヴァンスのセミの鳴き声やラベンダーの香り、オリーヴの木々、訛りの強いマルセイユ言葉を思い起こさせます。

マルセイユでの石鹸作りは、クレスカス・ダヴァンという石鹸職人によって1370年にはじまりました。 マルセイユ石鹸の質を保証するために、ルイ14世は1688年に成分基準を定める法令を出し、プロヴァンス産のオリーヴオイルのみを使用した石鹸だけを「サヴォン・ド・マルセイユ(マルセイユ石鹸)」 と称することができると定めました。

マルセイユ石鹸は、72%が植物性オイルでできており、着色剤や合成添加物、アレルギー反応を起こす原料は一切含まれていません。高い洗浄力、低アレルギー性、エコロジーと、この石鹸の長所は数え切れないほどあり、体を洗うだけでなく、家の掃除やベビー服の洗濯、男性のひげ剃りなど、フランスで何世代にもわたり、さまざまな用途で愛用されています。マルセイユ石鹸はナチュラルでシンプル、そして清潔さを保つ昔ながらの石鹸です。